日本地域看護学会 論文投稿に関する不正行為防止のためのガイドライン

本ガイドラインは,一般社団法人日本地域看護学会(以下,本学会という)が発行する日本地域看護学会誌(以下,本誌という)への不正行為の抑止を図り,本誌の学術性と社会的信頼性を確保することを目的とする.

  1. 投稿に関する不正行為の定義
    本ガイドラインにおいて「不正行為」とは,「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(文部科学省,2014)で特定不正行為と定義されている,捏造,改ざん,盗用とする.また,「不適切な行為」を,多重投稿,分割投稿,不適切なオーサーシップ,その他の不適切な行為とする.

    1. 1)不正行為

        不正行為は,故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる,投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造,改ざん及び盗用である(文部科学省,2014).

        (1) 捏 造
        存在しないデータ,研究結果等を作成すること.

        (2) 改ざん
        研究資料・機器・過程を変更する操作を行い,データ,研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること.

        (3) 盗 用
        他の研究者のアイディア,分析・解析方法,データ,研究結果,論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること.

    1. 2)不適切な行為

        (1) 多重投稿

        多重投稿とは,同一内容の原稿を,同一言語,複数言語にかかわらず,同時に,複数の雑誌に投稿することである(日本医学会日本医学雑誌編集者会議,2022).

        本誌投稿規程2「投稿原稿の内容」において,「投稿原稿は,その内容が過去に他誌に掲載,あるいは現在も掲載が予定されていないものに限る.」としており,多重投稿を禁止している.また,同じ研究成果の多重投稿は,適切な引用がされていない場合,自己盗用とみなされることがある.

        ただし,以下の発表は,本誌投稿時に申告および論文に明示している場合,多重投稿とはみなされない.

        ・学会発表の抄録やポスター発表などの予備的報告

        ・大学の学位論文(機関リポジトリに全文公開している論文を除く)

        ・学会で発表しただけで完全な報告がなされていない研究や,記録集(proceedings)に掲載されている内容を論文としてまとめた原稿

        (2) 分割投稿
        1つの論文で報告できる内容を複数の論文に分割して投稿すること.

        (3) 不適切なオーサーシップ
        本誌投稿規程5「著者資格(Authorship)」において,「著者とは,投稿原稿に重要な知的貢献をした者とし,研究の着想,デザイン,データの入手,分析,解釈に重要な貢献をしていることに加え,投稿原稿の作成に関与し,内容について責任を負い,研究への十分な参加をしていることとする.」としている.この基準に該当しない貢献者は,謝辞に記載する.

        (4) その他の不適切な行為

        ・日本地域看護学会倫理綱領に反する倫理的に問題が認められる行為

        ・著作権を侵害する行為 など

  1. 本ガイドラインの適用対象
    本ガイドラインの適用は,原則,制定後に本誌に投稿された論文とする.ただし,制定以前に本誌に投稿され,すでに掲載された論文であっても,明らかな不正行為やその疑いなどが判明した場合は,本ガイドラインの適用対象とする.

  1. 審議手順
    1. (1) 本ガイドラインが適用対象となる事案が発生した場合は,本学会編集委員会が審査を行い,その結果に基づき理事会において対応を決定する.編集委員会において審査に当たる者は,編集委員の中からCOI関係にない者を編集委員長(編集委員長がCOI関係にある場合は副編集委員長)が選ぶ.ただし,編集委員の中で不足のある場合は,本学会員の中から適切な者を選ぶことができる.
    2. (2) 本ガイドラインの適用対象となる事案が発生した際は,基本的にCommittee on Publication Ethics(COPE,出版倫理委員会)から公表されている手順に従う.具体的には,投稿原稿に多重発表の疑いがある場合,掲載論文に多重発表の疑いがある場合,投稿原稿に盗用の疑いがある場合,掲載論文に盗用の疑いがある場合,投稿原稿にデータ捏造の疑いがある場合,掲載論文にデータ捏造の疑いがある場合,ゴーストオーサーシップ・ゲストオーサーシップ・ギフトオーサーシップの疑いがある場合の対応などに準ずる.編集委員による審査結果をもとに理事会にて最終審議を行う.
    3. (3) 理事会における審議の結果,不正行為が認められると判断された場合,本学会は,掲載前の論文については投稿論文の受け付けおよび掲載決定を撤回し,すでに掲載済みの論文については掲載を撤回する.これらの決定事項は,理事長名にて著者全員に通知する.
    4. (4) 理事会における審議の結果,不正行為とは認められないが,すでに掲載された論文内に誤りが見つかった際,誤りによって論文の結果,解釈,結論の方向性や有意性が変わらない場合,本学会は訂正の掲載にて対応する.すでに掲載された論文内の誤りが深刻な場合や訂正で対応できない場合は,本学会は当該論文を撤回する.論文の訂正および撤回の決定は,理事長名にて著者全員に通知する.
    5. (5) 不服申し立てがある場合は,理事長名の通知から2週間以内に,任意の文書にて理事長宛てにその旨を提出する.
    6. (6) 不服申し立ての審議は理事会に付託する.COI関係にない理事間による審議を経て決定した事項について理事長名で不服申し立て申請者に通知する.
  1. 守秘義務
    不正行為および不適切な行為への対応に携わるものは,対応に関連したすべての事項について知りえた情報を他に漏らしてはならない.

引用文献

Committee on Publication Ethics(COPE,出版倫理委員会):Flowcharts: Japanese. https://doi.org/10.24318/cope.2019.2.34

Committee on Publication Ethics(COPE,出版倫理委員会):Retraction guidelines. https://doi.org/10.24318/cope.2019.1.4

International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE,医学雑誌編集者国際委員会)(2022):Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly work in Medical Journals, Updated May 2022. http://www.icmje.org/recommendations/

文部科学省(2014):研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン. 平成26年8月26日文部科学大臣決定, https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf

日本医学会日本医学雑誌編集者会議(2022):日本医学会医学雑誌編集ガイドライン2022. https://jams.med.or.jp/guideline/jamje_2022.pdf

参考文献

研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会(2012):研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書, https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/press20120124_01_1.pdf

(附則)本ガイドラインは,令和5年5月14日より施行する.